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「世の中には僕よりもはるかに優しい男がいる
僕は君と別れるまで一緒にいるだけだ」
「どうしてそんなさみしいことが言えるの?
わたしって要らないの?
いなくていいの?
意味無いの?」
「今日はもう帰る。」
「帰らないでよ
あなたが帰るとわたしは一人よ
さみしいままここに一人残るのよ
まだ話は終わってないのにどうして帰ろうとするの?
」
「答えが無いからだよ」
ヤスは立ち去り
玄関のドアを開けた
バタンとしめてコンクリートの階段を降りた
「ガチャッ」
とだけ音がしてヤスは頼子に縛られた
彼女に言葉は無い
頼子はただただ両手でヤスの胴をつかんではなさない
ヤスはそのままうつむいていた
ひんやりとした白いコンクリートに
ぽたぽたぽたぽた模様が出来た
じんわりと小さな小さな水たまりが
それでも薄く大きくなった
固く冷たいコンクリートに
人の心が浮いていた
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