第十章 手

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ドス!ドス! 滝のナイフがズーに突き刺さるが、まったくダメージがない様子である。ズーは腕を振り下ろし、滝に襲い掛かる。ダメージの残る身体、紙一重でなんとか躱し続ける滝。パネルに近づいていく葛切の前に、立ちはだかる渉。 渉「お前の好きにはさせない!」 葛切「《弱》同士の戦いは、自力の差だけだ。血は止まっているようだが、今の君は…」 葛切の長い足が渉の左手に命中した。 渉「ぐぁ!」 小指と薬指のない左手を蹴られ、痛みが走る。怯んだ所を畳み掛けるように、渉の顔面に蹴を見舞う。 ドガァ! 尻餅をつく、渉。葛切がパネルに手を掛けた。 スピーカー「ただ今の設定は、強→男、中→子供、弱→女 です」 《中》状態になってしまった滝は、ズーの攻撃を避けきれない! ドス、ドスドス! ズーの鋭い爪が、滝を串刺しにした。 渉「滝ー!!」 滝は、最後の力を振り絞り、渉に言った。 滝「クズ…キ…ユ…ビ…」 《強》状態になった渉は、力一杯ズーに殴りかかった。 バキィ! ズーは壁まで吹っ飛んだが、何事もなかったように立ち上がった。葛切は、教卓の上で足を組んで眺めている。 葛切「あぁ~あ~、格好つけて出てきたわりに、あっさりやられちゃったねぇ」 渉「きっさっまぁー!」 葛切「さぁ、ズー!ワシもこいつを攻撃する!二人掛かりで終わらすんじゃあ!!」 渉「滝、滝!目を開けろ!滝ぃー!」 渉は滝を抱き抱える。しかし、その身体からはすでに体温が感じられなかった。 美紗「原さん!滝のリングを私に!」 伶奈におぶられた、美紗が教室のドアから叫んだ。
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