第十章 手

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葛切を睨む渉、その渉を見て、葛切も睨み返す。 葛切「怒っているのかい?いやいや…怒りたいのは、こっちの方じゃぁ!!ボケがぁぁぁ」 急に葛切の口調が変わった。葛切は、続けてしゃべり続ける。 葛切「ワシの計画では、お前のアニキ、『原 正』をこのゲームでねじ伏せて、会社のチンカス共にワシの力を認めさせるハズだったんじゃあ!!」 渉「そんなくだらない事の為に…何人死んだと思ってるんだ?」 深いため息をつき、落ち着きを取り戻した葛切は、悲しそうな顔をして話続ける。 葛切「…生まれた時から、正の影で育った君になら、わかると思ったが…いや、わかるハズがないか…一度も頂点に君臨した事など、ないだろう?ある日、いきなり王座から引きずり降ろされ、何をやっても、誰も見向きもしない日々。僕のプライドはズタズタになった…僕は、とある国の軍が作り出した実験プランと、人工生命体を元にして、このゲームを作り出した。しかし、正にはお見通しだったようだな。君を身代わりによこすとは…」 予想外の発言に、渉は動揺した。 渉「何、言ってるんだ?兄貴が、わかってて俺を代わりにしたってのか!?」 ぶるぶると、怒りに震える渉を尻目に、葛切は眼鏡のヅレを直した。 葛切「気が付いていなかったのかい?おめでたい奴だな…そうやって、気が付かない内に利用されて、育ってきたんだろうな」 渉は葛切の言葉にすっかり動揺していた。 渉「兄貴が…俺を…わかってて…」 動揺する渉の隙をついて、葛切の手が、パネルに伸びた。が、黒板にナイフが突き刺さった。 ドス! 渉の脇から、滝が現われた。 滝「あんたが邪魔で、葛切に当てられなかったじゃないか…それにしても、あんた、自分の兄貴の事も信じられないのか?」 チッ、と葛切が舌打ちをした。
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