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「あ…あぁあああ……ッ」
秋兎の言葉に狂ったように叫び首を絞める力を最大限にいれながらも捺姫は頭で葛藤を繰り返した。
愛シイ、愛シイ銀ノ君。
私ノモノ二、私ノモノダ。
誰ニモ何ニモ渡シハシナイ
殺シテシマエ、
殺シテハダメダ。
「……ッぁあぁああ!!」
頭ガマルデ割レルヨウ。
痛クテ、痛クテ、
破壊、サレソウ。
刹那、秋兎の頬にポタリと落ちる雫が一つ。
「助……け、て…助……け、て……秋、兎……ッ」
それは捺姫の涙だった。
秋兎の首から手を離し、少し離れた場所でまるで狂ってしまったかの様に頭を押さえ蹲る捺姫。
「ゲ、ホッ……ガハッ、ゲェッ…っ、う……捺姫」
首を絞められていた手を離され急激に入ってきた空気と、むせるような息苦しさに見舞われながらも秋兎は蹲る捺姫の傍へと歩を進める。
「……捺姫」
「い、や……いやぁああ」
捺姫に近寄り、その肩へ触れようとする秋兎だが捺姫はガタガタと震え怯えたように叫び狂うばかり。
「捺姫……!!」
「……いゃああぁあ!!」
何かに怯えるように暴れる捺姫に伸ばした腕を何度振り払われようが爪で切り裂かれようが秋兎はお構いなしに再度手を伸ばす。
「捺姫……ッ!!」
「……っ、ぁ」
諦めずに捺姫に手を伸ばし続けた秋兎がを抱き締め落ち着かせるまでには、その腕や顔は切り傷や血に塗れて痛々しい状態となっていた。
「あ、き……と?」
「大丈夫だ……安心しろ……俺は此処に居るだろ……な?」
色を失った虚ろな目で名を紡ぐ捺姫を離さないよう秋兎は力一杯、抱き締め宥めるように言う。
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