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「……っ、ぁ……ごめ、ごめんなさい……ごめんなさい……ッ!!わ、たし秋兎を、また……っ」
「心配すんな捺姫、俺は生きてる……証拠に、ほら心臓も鳴ってるだろ?」
「……あ」
「心配しなくても俺は捺姫の傍から居なくなったりしねぇよ」
ガタガタと震えながら、また、殺そうとしたと言おうとする捺姫に秋兎は穏やかな口調で、ゆっくりと安心させるよう言葉を紡いだ。
捺姫が秋兎を手に掛け殺めようとした事は今回に限った事ではない。
おまけに、それは一度や二度ではなく最早、多回数となっていた。
だが秋兎は捺姫を侮蔑する訳でも離れる訳でもなく傍に居て捺姫を愛し続ける。
「ごめ…なさ…ぃ、秋兎……も……しないから…ッ」
だから傍に居て、離れていかないでと捺姫は懇願する。
そんな捺姫を見ながら秋兎は穏やかに笑う。
「安心しろ捺姫。俺は、何処にも行かねぇし捺姫の傍から消えたりしねぇから……」
「うん……うん……ッ、ありがと……秋兎……っ」
捺姫の涙を指で拭い目蓋に口付ける秋兎に捺姫は震える声ながらも礼を言う。
「捺姫、愛してる……ずっと一緒だ」
そう、ずっと、ずっと。
永遠に共に居る。
離れたりなどしない、
離したりなどしない。
「俺は居なくならねぇ」
そう、居なくならない。
捺姫の歪んだ愛を受けとめ続ける。
生きても捺姫と、
死んでも捺姫と。
生きていれば捺姫からの行きすぎた愛情を受けた後、己の奇行に傷ついた捺姫を慰め愛し続ける。
もし捺姫に殺されても秋兎を愛し過ぎ己の手で殺めてしまった捺姫は秋兎への愛に縛られ一生、秋兎を忘れられない。
「捺姫、愛してる。一生離さねぇ」
「うん……うんっ、私も……秋兎を愛してる……一生、離さないで……ッ」
捺姫の口から紡がれる愛の言葉を聞き秋兎は気付かれないよう口元を吊り上げる。
愛し過ぎたが故に歪んだ愛情に満ちた殺意を抱いてしまった捺姫。
深く愛したが故に捺姫の歪んだ愛情を受け入れがんじがらめの束縛の檻に捺姫を誘導する秋兎。
はたして狂っているのは、
秋兎か捺姫か。
その答えを知っているのは
闇の中二人を照らす
月の光のみ。
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