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マンションに戻り、あたしは大きいかばんに荷物を詰めた。
今夜零と話をしたら、一時的にここを出ようと思っているからだ。
亜希にはもうメールしてある。
一時的だといいな…なんてことを考えていると、また涙が出た。
いっそのこと枯れてしまえばいいのに。
荷造りを終え、洗面所で鏡を見た。
ひどい顔をしている。
お風呂に入っておこうか迷ったけど、どうせまたぐちゃぐちゃになりそうだからやめておいた。
リビングに戻り、ソファに座ってため息をついた。
零はいつ帰ってくるんだろう。
そう思っていたときだった。
玄関が開く音がした。
時計を見るとまだ4時で、仕事が終わる時間ではなかった。
「栞っ…」
息を切らした零があたしを抱きしめた。
「仕事は?」
「接待終わってからすぐこっち来た。上総からメール入ってたから」
きっと上総は零にすぐメールしたんだろう。
「…とりあえず着替えなよ。スーツ暑いでしょ」
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