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零は着替え終わると、あたしの隣に腰を下ろした。
沈黙が流れた。
言わなきゃいけないことがあるのに、言葉がでないのは何故だろう。
ずるいあたしはしばらく黙っていた。
すると零の口が開いた。
「…眞鍋さんとなにかあったの?」
「…」
あたしは深呼吸をした。
「あの人は…あたしが前に付き合っていた人。零と、二年前に出会うきっかけを作った人…かな?」
あたしは一つ一つ思い出しながら伝えた。
眞鍋さんと出会ったのは、あたしが就職して段々仕事に慣れて来た頃だった。
「合コン?」
「うん。亜希の同期の子が、友達一人連れて来てって」
断る理由もなかったから、あたしは合コンに行くことにした。
「「「かんぱーい」」」
あの人はあたしの向かいに座っていた。
物静かで落ち着いた人、それが彼の第一印象だった。
「眞鍋透です」
彼はにこやかにそう言った。
くせのない、好かれる感じの笑顔だった。
そのあとの話で、彼は会社で営業をしていると言っていた。
向いていそうだった。
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