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秋に入りかけた頃、ついにその日は来た。
「上に部屋取ってあるんだけど…」
ホテルで食事を終えた頃、眞鍋さんがカードキーを見せながらそう言った。
意味はすぐわかった。
「嫌だったら送っていくよ」
「…嫌じゃないです」
あたしの答えは決まっていた。
部屋に入ると、自分の心臓の鼓動がとても早いことに気付いた。
死にそうなくらいドキドキしている。
「栞ちゃん…」
キスをしたままベッドに倒れ込んだ。
ゆっくりと服を脱がされ、焦らされたように愛撫される。
「やっ…あっ…」
ゆっくりと押し寄せてくる快感に、あたしは何度も体を反らした。
そして眞鍋さんと一つになったとき、幸せすぎてあたしの目からは涙が一筋流れた。
「大事にするよ…」
彼はあたしを抱きしめながらそう言った。
この日から彼はあたしを「栞」と呼ぶようになった。
付き合うことになったのを亜希に報告すると、亜希は自分のことのように喜んでくれた。
この頃は本当に幸せだった。
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