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「そのあとのことは…あんまり覚えてないの。雨が降って来て…でもそんなの関係なくて…あたしただ歩いてた。そんなあたしをタクシーに乗せてくれたのが…零だったの」
「…それがあの日だったんだ」
零はあたしから顔をそむけた。
「ねぇ零。あたし、もう恋なんて出来ないって思ってた。深入りするのが怖くて、ずっとバカみたいに一時的な寂しさを埋めてた。零と会って…強引だったけど零にハマって好きになって…ずっと…一緒にいたいって思ってる」
「俺だって…ずっと一緒にいたいって思ってるよ」
優しく抱きしめられた。零の腕が少し震えていた。
「…けど自信がないの」
「どうして?」
「あたし…もう子供生めないの」
零の体がピクッと動いた。
「捨てられて…一人で生んで育てることなんてあの時のあたしには出来なかった。中絶するとき、時期が少し遅くて。あたし…零との子供…できないんだよ」
しばらくあたしは泣きじゃくった。
零も震えていた。
泣いているんだと思った。
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