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「キスしていい?」
あたしが答えを出す前に、零の唇が触れていた。
これが最後のキスじゃないことを強く願った。
「…行くね」
うつむいたままの零を残し、あたしは部屋を出た。
外に出ると、亜希が車の中でタバコを吸いながら外を見つめていた。
あたしが助手席のドアを開けると、かなり驚いたみたいだ。
荷物を積み、車に乗り込んだ。
「ありがとう。いつ話が終わるかわからないのに、ずっと待っててくれたんでしょ?」
「…ひどい顔してると思ったから」
そう言って亜希はあたしの頭に手を置いた。
それが引き金になったのか、あたしはまた泣き出してしまった。
「ちゃんと聞いてくれたんでしょ?」
あたしは頷いた。頷くことしか出来なかった。
「…」
亜希が車を走らせた。
その間もずっと泣いていた。
涙は本当に枯れないみたいだ。
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