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そのあとはとにかく歩いていた気がする。 今すぐ自分の部屋に帰りたいような、帰りたくないような気分だった。 全てがどうでもよかった。 空も暗くなり始めた頃、あたしは公園のベンチに放心状態で座っていた。 人の通りが少なくてよかったと思う。 あたしの頭の中に焼き付いた、さっきの二人の姿が忘れられなかった。 幸せそうに笑っていた。 「前にあたしに結婚しようって言ったのは…うそだったんだね」 とめどなく涙が溢れた。 こんな姿でいつまでもここにはいられないと思い、あたしは帰ることにした。 駅に向かっている途中、突然激しい雨が降って来た。 雷まで鳴っている。 これだけ激しい雨が降っていれば、誰もあたしが泣いているなんてわからない。 そう思ってあたしはもっと泣いた。 すると歩くのが辛くなって来た。 誰も歩いてない道で、あたしはその場に座り込んだ。 どうしてだろう。 ひどい捨て方をされたのに、綺麗な思い出しか出てこないなんて。 .
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