10

4/11
前へ
/263ページ
次へ
「大丈夫?」 後ろから突然声をかけられ、あたしの体はビクッとなった。 振り向くと、知らない男の人が同じようにずぶ濡れになって立っていた。 「…」 「立てる?」 そう言われて手を差し出されたけど、あたしはほっといてほしかったので手を取らなかった。 「ほっといてください…」 冷たくしたつもりなのに、この男の人はまだあたしから離れない。 「…こんなにずぶ濡れで泣いている女の子は放っておけないよ。ほら、立って」 無理矢理抱き上げられ、立たされた。 「家、近いの?」 あたしはコクンと頷いた。 彼は調度通り掛かったタクシーを止めた。 「ほら乗って」 無理矢理車内に押し込まれた。 「おじさん、この子家までよろしくね。これ」 そう言って男は五千円札を運転手に渡した。 ろくに御礼も言えないまま、タクシーのドアは閉まって発車した。 .
/263ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32360人が本棚に入れています
本棚に追加