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「大丈夫?」
後ろから突然声をかけられ、あたしの体はビクッとなった。
振り向くと、知らない男の人が同じようにずぶ濡れになって立っていた。
「…」
「立てる?」
そう言われて手を差し出されたけど、あたしはほっといてほしかったので手を取らなかった。
「ほっといてください…」
冷たくしたつもりなのに、この男の人はまだあたしから離れない。
「…こんなにずぶ濡れで泣いている女の子は放っておけないよ。ほら、立って」
無理矢理抱き上げられ、立たされた。
「家、近いの?」
あたしはコクンと頷いた。
彼は調度通り掛かったタクシーを止めた。
「ほら乗って」
無理矢理車内に押し込まれた。
「おじさん、この子家までよろしくね。これ」
そう言って男は五千円札を運転手に渡した。
ろくに御礼も言えないまま、タクシーのドアは閉まって発車した。
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