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「…」
亜希の部屋に帰ってからも、あたしは心配されるくらいテンションが低かった。
「栞、ケータイなってる」
「あっ…」
それさえ気付かないなんて、ホントどうにかしてる。
ケータイの画面を見て、あたしは動揺した。
『着信中 零』
愛しさと不安が一気にあたしの心を締め付けた。
「出ないの?」
「…出る。ちょっと外出るね」
そう言ってあたしはベランダに出た。
そして意を決して通話ボタンを押した。
「…もしもし」
「あ、俺」
「うん…」
久しぶりに零の声を聞いた。
なんだかとても懐かしい気分だ。
「今亜希ちゃんち?」
「うん、そうだよ」
「今から出てこれる?」
「え…うん。大丈夫」
「そしたら今俺ん家出るから、待ってて。車だからそんなに時間はかからないと思う。じゃぁあとで」
零はそう言って一方的に電話を切ってしまった。
あたしはドキドキが治まらないまま部屋に戻った。
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