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「着いたよ」
山頂にある駐車場に車は止まった。
エンジンが切れ、車の中は静寂に包まれる。
「ここ、夜景とか大して見えないから。よく純也と大事な話をするときに使っていた場所なんだ」
「そうなんだ」
大事な話と聞いてドキッとしたのは言うまでもない。
あたしは零の次の一言を待った。
「栞が出ていってから、俺なりにしっかり考えたつもりだよ」
「うん…」
「でも、俺が話す前に、栞の気持ちが聞きたい。栞の今の気持ち」
「あたしの…気持ち?」
予想外のことを言われ、あたしは少し困惑した。
「そう。栞の気持ち」
「あたしは…こんなこと言っちゃいけないと思うけど、零といたい。零が好き」
あたしはゆっくりと気持ちを落ち着かせながら話した。
「零と離れた五日間…たった五日だけど、淋しくて死にそうだった。会いたかった。触れてほしかった。ずるいけど、零がいなきゃ…やだよ」
自分の気持ちを正直に言ったつもりだ。
あたしの目からはいつの間にか涙が溢れていた。
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