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「いるかもしれないよ」
あたしがそう言うと、零の動きが完全に止まった。
拘束が弱まり、あたしの両手は解放された。
「そういう冗談は好きじゃない」
少し不機嫌な顔をした零は、あたしの頭を強引に引き寄せてキスをした。
食べられるような、乱暴なキスだ。
「んっ…」
「他の男とか、考えたくもない…」
「…わかってるくせに。あたしが零だけだって」
あたしが膨れっ面を見せると、零はさっきまでの不機嫌顔とは一転して無邪気な笑顔を見せた。
「心配なんだよ。栞がかわいいから。さ、栞がのぼせる前に上がろうかな」
絶対に旅先のホテルでのことを言っていると思った。
「それ、いつのこと言ってるのよ…」
零は笑いながら浴室を出ていった。
あたしがお風呂から上がると、零はすでに眠っていた。
疲れているんだろうと思い、あたしはそっとベッドに潜り込んだ。
零の規則的な寝息を聞いているとこっちまで眠くなってくる。
あたしが眠りにつくまでそう時間はかからなかった。
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