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「なんか…さっきまでの零じゃない」
「うん、そうかも」
そう言って零はあたしの腕を掴んで足早にバーを出た。
「ちょっと零!」
エレベーターに乗ってからも、零は黙ったままだった。
「零!…んっ」
こちらを振り向いたかと思ったら、唇が重なっていた。
「何その驚いた顔。してほしかったんでしょ?」
「そんなことな…んぅ、やぁ」
「誘ったのは栞だよ」
エレベーターを降り、部屋の前で零が止まった。
「入る?」
零はドアを少し開けると、あたしにそう聞いてきた。
「ずるい、そんな言い方」
軽く零を睨んで、あたしは部屋に足を踏み入れた。
夜はまだ始まったばかり。
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