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しばらくして零が戻って来た。
当然あたしは寝たふりをした。
気まずい。
あたしが一方的に。
どうかあたしの勘違いであってほしい。
零がいずみさんに特別な感情を持っているだなんて。
結局そのまま朝を迎えることになった。
当たり前に寝不足だ。
これから仕事があるのに大丈夫だろうか。
なんだか零ともいずみさんとも顔を合わせにくかったけど、そこは避けられない道だ。
一緒に朝ごはんを食べ、零と部屋を出た。
「栞今日どうした?」
歩きながら零が言った。
「ちょっと寝不足…朝早く起きちゃって」
それ以上は何も言えなかった。
あたしは大きなモヤモヤを抱えながら仕事をした。
そしてあっという間に終業時間になった。
帰り道、零が話してるのをあたしは上の空で聞いていた。
話が頭に入らない。
「栞、聞いてる?」
気付くともうマンションの前だった。
「あ…ごめん」
「今日ずっとそんな感じだよ。なんかあった?」
零が心配そうに頭を撫でた。
これが引き金だったかのように、あたしの涙腺は一気に緩んだ。
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