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「栞?」
焦った零はあたしを腕の中に引き寄せた。
昨日の光景が浮かんだ。
「一体どうしたんだよ…なんかあったの?」
「…ごめん。今日はうちに帰りたくない」
「え?」
突然そんなことを言ったから、零は驚いているようだった。
「今日は亜希のところに行く」
「どうして?」
「…いろいろ気持ちの整理がしたい。それ以上は言いたくない。零、早くいずみさんのところに行って」
あたしはそう言って零の腕から離れた。
零は意味がわからないといった顔をしている。
「それじゃぁ…」
そう言って歩き出そうとしたとき、零はあたしの腕をつかんだ。
「待って。それじゃぁわかんねーよ」
「あたしもわかんない。零がわかんないよ」
つかまった腕を思い切り振りほどいた。
あたしはそのまま零の顔も見ないで走り出した。
零は追ってこなかった。
追ってきてほしくなかったからこれでよかったんだと思う。
あたしはそのまま亜希に連絡することも忘れ、亜希のところへたどり着いた。
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