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言った瞬間、零は向かって来た人とぶつかった。
そこからはスローモーションだった。
零がゆっくりと前に倒れた。
お腹を押さえて。
顔は苦しそうに歪んでいる。
地面を見ると、真っ赤な液体が広がってきた。
それに気付いた周りの人達が悲鳴をあげた。
その悲鳴を聞いて、上総達があたし達のほうを向いた。
「零!」
上総の問いかけに、零は苦しそうに声を出した。
「しお…り、は?」
「喋るな。栞は大丈夫だから」
そんなやり取りを、あたしは頭のどこかで聞いていた。
理解できない。
何でこんなことになったの?
「上総、救急車すぐ来るって」
章介が言った。
周りにどんどんと人が集まって来た。
「すいません、道開けててください」
司が叫ぶ。
地面に広がった血は、どんどんと広がっていった。
救急車のサイレンが近づいている。
零はとうとう動かなくなった。
上総が零の名前を呼んでいる。
あたしはそこに立ち尽くしたまま、未だにこの状況を理解できずにいた。
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