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気付いたらあたしは手術室の前のイスに座っていた。
どのくらい時間が経ったんだろう。
手術中と表示されたランプがやけに生々しい。
どうしてあたしはここにいるんだろう。
そんなことを考えていると、誰かが走ってくる音がした。
「栞ちゃん!」
「お兄さん…」
零のお兄さんだった。
慌てて駆け付けたのか、髪もスーツも少し乱れている。
「大丈夫?」
「はい…」
お兄さんはあたしの隣に座ると、ゆっくりと深呼吸をした。
「零を刺した犯人、捕まったそうだよ」
「え…」
あたしはその名前を聞いて愕然とした。
信じられない。
「どうして…眞鍋さんが…」
「逆恨みもいいところだ。零に仕事で上に行かれて、会社での立場が悪くなったそうだ。それにいずみとの離婚も加わって、全部零のせいだと言っているらしい。馬鹿な話だよ。ふざけるのも大概にしてほしい」
お兄さんは淡々とそう言ったけど、その表情を見ると怒りが満ち溢れていた。
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