32359人が本棚に入れています
本棚に追加
/263ページ
次の日、朝から会社は騒然としていた。
話しは詳しいところまで広まっているようだった。
「神谷君、昨日の今日だし、無理して仕事しなくてもいいんだよ?」
部長があたしを気遣ってくれたけど、あたしは「大丈夫です」と答えた。
零の意識がいつ戻るかわからない不安はあったけど、仕事をしていたほうが気が紛れる。
会社のみんながあたしを気遣ってくれる中、上総達や真奈は普通に接してくれた。
なんだかそれが助かった。
仕事が終わってそのまま零のところに行った。
病室に入ると、花瓶に花が入っているのに気付いた。
誰か来たのだろうか。
零は昨日までと変わらない寝顔だった。
あたしは傍に座って零を見つめた。
「零…」
なぜだろう。
零を見ると、昨日の光景がよみがえる。
突然倒れて、血が広がって、動かなくなって。
なんだか自分の時間がそこで止まっているような気がした。
「零…早く目を覚まして…早く元気な姿見せてよ…」
あたしは静かに涙を流した。
.
最初のコメントを投稿しよう!