32359人が本棚に入れています
本棚に追加
/263ページ
「零、どこも痛くないか?」
純也が聞いた。
「あぁ。心配かけてごめんな、純也も亜希ちゃんも」
零のしっかりとした言葉を聞き、あたし達は安心した。
でもすぐに、次の言葉で零はあたしを絶望の底に突き落とした。
「この人兄貴の彼女?キレイな人だね」
零は明らかにあたしを見てそう言った。
「零…?」
最悪な予感がした。
「は?お前それ、本気で言ってるのか?」
「本気もなにも、会うの初めてだろ」
本気で言ってる…それは零の表情から容易にわかった。
想像もしていなかった展開に、あたしは気分が悪くなって病室を飛び出した。
「栞!」
亜希が追いかけてくる。
「待って栞!」
あたしはすぐに追い付かれた。
肩を掴まれ、その場に座り込んだ。
「栞…」
亜希はあたしの傍にしゃがみ込んだ。
「こういうのって、ドラマとか…そういう作り話の世界だと思ってた…」
「…うん」
「あるんだね…こんなことが」
.
最初のコメントを投稿しよう!