18

13/21

32359人が本棚に入れています
本棚に追加
/263ページ
この日、あたしは零のところに行こうか迷っていた。 思い出してくれてたらいいけど、そうじゃなかったら辛いだけだから。 だけど思い出してもらうには会ったほうがいいのかもと思い、あたしは結局行くことにした。 病室のドアを開けると、零は起きていて本を読んでいた。 ふと目が合った。 「…」 あたしは何も言わず、ベッドの傍にあるイスに座った。 「まだ…わかんない?」 あたしがそう聞くと、零は困った顔をした。 「…うん、ごめん。昨日も失礼なこと言ってごめん。大事な彼女に向かって…」 「彼女って…お兄さんか純也が言ってたの?」 「兄貴に。すげー怒られた。…本当に傷つけてごめん。でも、思い出せないんだ、どうしても」 覚悟をしててもやっぱりショックだった。 彼女だって聞いても、あたしを見る零の目は昨日のままだ。 今のあたしは零にとっては他人なんだ。 零の前なのに、あたしはどうしようもなくなって泣いた。 零はまた困った様子だった。 .
/263ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32359人が本棚に入れています
本棚に追加