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「ごめん…」
零はそう言うと、あたしの頭を優しくなでた。
そんなことをされたら余計泣けてくる。
零の手は、当たり前だけど零のままで、それがいっそうあたしを辛くさせた。
それから零は間もなく退院した。
傷の経過も順調だったからだ。
最初零が退院すると聞いたとき、あたしは戸惑った。
一緒に住んでいるから。
あたしにとって零は大事な彼氏だけど、零にとってあたしは他人だから。
そんな中生活したって、お互いが大変な思いをするだけだと思った。
亜希が自分のところにきてもいいと言ってくれたけど、零の記憶がいつ戻るかもわからないのに亜希のところに行くわけにはいかなかった。
他に行く宛なんかない。
なのであたしは零とこれまで通りに暮らすこと選んだ。
零は本当にそれでいいの?と聞いて来た。
あたし次第で零はお兄さんのところに行くつもりだったらしい。
だけどあのマンションは元は零のだから、零を追い出すようなことはしたくなかった。
だからまた二人で暮らすことにした。
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