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それでもやっていくしかなかった。
自分にしっかりしろと言い聞かせた。
「零、今日ご飯何にする?何食べたい?」
「何でもいいよ」
「そう」
あたしは晩御飯を作るためにキッチンに入った。
思い出すことを期待して、あたしは零の大好物ばかりを張り切って作った。
「おいしいよ。料理うまいんだね」
零はニコニコしながらそう言った。
それだけであたしのテンションは高くなる。
さっきまでの気分が嘘みたいだ。
と思ってたけど。
「これ、初めて食べるけどすごくおいしいよ」
零が指した料理は、零が大好きで週に一回は必ず作っていたものだった。
初めてそれを食べたとき、零は同じようにニコニコしていた。
「…」
「俺、変なこと言った?」
「ううん。隠し味に味噌を使ってるんだ~」
平然を装った。
零がこれを食べたら思い出してくれるかもしれない、そんな淡い期待は簡単に裏切られてしまったみたいだ。
やっぱりそううまくはいかないのかな、と思った。
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