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「栞、大丈夫?」
そんなあたしを気に掛けてくれたのが上総だった。
さすがに周りが見えている。
オフィスでは普通を装っていたつもりだったのに。
話を聞いてもらうついでに、あたしは仕事帰りにそのままマンションまで送ってもらうことにした。
今の状況を告げると、上総は難しい顔をした。
アドバイスしにくいだろうと思った。
「栞はがんばってると思うよ」
「え?」
マンションに着いたとき、上総が言った。
「十分がんばってる。だから…零から少し離れても、俺はいいと思う。誰も責めないよ。栞のことは」
涙が出た。
言ってほしかった言葉かどうかはわからないけど、あたしの心に突き刺さった。
そんなあたしを、上総は自分のほうに抱き寄せた。
「あ…あの…」
突然のことで驚いた。
今あたしは上総に抱きしめられている状態だ。
「あぁ。深い意味はないよ。深い意味があったらみちるに殺されるから。…後輩を慰めるのが先輩でしょ」
「…そっか」
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