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「相談ごととか言って、栞はもうどうするか決めてるんじゃない」
「…そうだね。亜希に聞いてもらいたかっただけなのかもしれない」
「亜希はいつでも栞の味方だから。ね?」
「ありがとう」
そうして電話を切った。
亜希の最後の言葉が嬉しかった。
亜希の言ったとおり、あたしの心はもうすでに決まっていたのかもしれない。
きっと上総に言われる前から。
上総の言葉は、あたしを迷わせる言葉じゃなくて、決心させる言葉だったのかも。
「ごめんね」
あたしは扉のほうを見てつぶやいていた。
あたしは強くなんてない。
零と出会えて、自分が変わって、少しは強くなったのかなって思ったときもあった。
でもそんなことはなかったみたいだ。
だって今、あたしは零から逃げようとしている。
この現実から逃げようとしている。
自分が自分じゃなくなるのが怖い。
自分がいつか壊れてしまうかもしれない。
そうなったとき、あたしも傷つくし、零も傷つくと思う。
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