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それなら、零はあたしのことなんか忘れて生きたほうがいいと思う。
あたしなんて初めからいないって思えばいい。
零は、そのほうが幸せだと思う。
あたしはそう考えていた。
そしてあたしは、ついにその日を迎えた。
今日は平日。
零はもう出勤している。
今頃朝礼を終えて仕事が始まっているだろう。
あたしが来なかったから、零は驚いているかな。
あたしは少し前に部長に相談して、しばらく休みたいということを伝えた。
部長は少し複雑な顔をしていたけど、了承してくれた。
零には何も言わないでほしいということも言っておいた。
あたしのものはまたダンボールに詰めた。
なんだか荷造りばかりだな、と思った。
ダンボールはそのまま隠すようにクロゼットに入れておいた。
もし帰らないことを決意したら、亜希に頼んで零に送ってもらおうと思っているからだ。
リビングを見渡した。
ここに住んでまだ半年とちょっと。
だけど想い出はたくさんある。
出て行くのは名残惜しい。
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