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そのままあたしは何をするわけでもなくリビングに戻り、ソファに座った。
もちろん頭の中は零のことばかりだった。
暗くなったのも気付かないで、あたしはずっとソファに座ったままでいたみたいだ。
もうすぐ零が帰ってくる、そう思ったときだった。
急にドアが開いた。
「おかえり」
「わっ…」
暗闇の中から声がしたものだから、さすがに零も驚いたみたいだった。
「…暗いから、出てったのかと思った。めちゃくちゃ焦った」
そう言って零はリビングの明かりを付けた。
「泣いてたの?」
「え?」
「目、腫れてるから」
ずっと座っていたから、あたしは今自分がどんな顔をしているかわからなかった。
泣いていたのは確かだけど、どれだけ腫れているんだろう。
零はあたしの隣に座ると、そっとまぶたに触れた。
外から帰って来たばかりだから、冷たくて気持ちがいい。
なにより、こうやって触れられるのはすごく久しぶりで、あたしはすごく嬉しくなった。
零が近い。
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