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「もういいよ」
零はそう言ってあたしをきつく抱きしめた。
その温もりに、堪えていた涙が一気に溢れ出た。
「零…ごめんね」
「謝るのは俺のほうだから。ここまで追い詰めてごめん…もっとちゃんと聞いてあげればよかった。甘えすぎてたんだ。俺が。」
あたしは泣きじゃくった。
やっぱり零に抱きしめられると安心するのかも知れない。
「栞…」
「…初めて名前呼んでくれた」
「え?」
「零、あたしの名前初めて呼んでくれた」
零は困った顔をした。
「そうだっけ?」
あたしは嬉しさから、泣きながら笑った。
それを見て零も微笑んだ。
そしてどちらからともなく、ゆっくりと顔が近づいた。
気付けば唇が重なっていた。
「離れるとか言わないで、これからも傍にいて」
零はそう言った。
「今まで暮らしてきて、俺のこと想ってくれてるのがすごく伝わるんだ。だから…俺、まだこんなだけど…辛い思いさせてるけど…栞といたいんだ」
「零………好き…」
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