32359人が本棚に入れています
本棚に追加
/263ページ
あれからすぐ、あたし達は籍を入れることにした。
特に思い入れのある日ではなかったけど、それ以上に二人の気持ちが高ぶっちゃったんだと思う。
だから式を挙げるとか、旅行に行くとか、そういうのはまだ何も決めてなかったし、
何よりお互いの親にもまだ会っていなかった。
ちゃんと電話はしたけど。
それだけちょっと気掛かりだったけど、あたしはすごく幸せだった。
「佐島…栞かぁ…」
「嫌なの?」
「そんなわけないし」
婚姻届を出して、そのままうちに帰って来た。
あたしがうちでゆっくりしたいと言ったからだ。
「…変な感じがするだけだよ。だって、ついさっきまで神谷だったんだもん」
「そうだね」
「戸籍は佐島だけど、会社じゃまだ神谷でいるつもりだから…なんか混乱しちゃいそうだなー…」
同じ部署に同じ名字が二人いると、かなりややこしくなる。
電話がかかってきたときは特に。
だからあたしは会社では神谷でいるつもりだった。
まだまだ辞めるつもりもなかったし。
.
最初のコメントを投稿しよう!