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亜希が握っていた検査薬は、判定ラインにくっきりと線が出ていた。
「なんか実感とか全然ないんだけどね」
亜希はそう言ってソファに座った。
「亜希、ちゃんと純也と話し合う。もし純也と本当に戻ることが出来なくても、亜希は生もうと思ってる」
亜希は強い目でそう言った。
実感がないと言ったけど、もう母の目をしていたのかもしれない。
あたしも今の亜希みたいに強い意志を持っていたら、今頃どうなっていたんだろう。
いまさらどうしようもないことだけど。
でも、純也と戻れなくても生むと決意した亜希をすごいと思った。
強いと思った。
「亜希がそう決めたなら、あたしはどうなっても協力するよ」
「ありがとう、栞」
その時インターホンがなった。
「誰だろ」
亜希は立ち上がってモニターを見た。
「あ…」
「どしたの?」
あたしもモニターを覗き込んだ。
そこに立っていたのは、純也と零だった。
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