32362人が本棚に入れています
本棚に追加
/263ページ
それから、どうやらあたしはまた力尽きて寝てしまったようだった。
すぐに夢を見た。
泣いているのは…あぁ、あたしだ。
これはあの日だ。
零と最初に出会った、あの土砂降りの夜の日。
思い出さないようにしてたのに、夢に出てくるなんて。
『愛してるよ、栞』
…うそ。
もう信じない。
『結婚しよう』
そう言ってたのに、どうしてあなたはあたしを選んでくれなかったの?
「栞!」
もうあたしの名前を呼ばないで。
もうあたしの中に出てこないで。
「栞どうした!?」
気がつくと、零が心配そうに顔を覗き込んでいた。
「…零?」
「お前本気で泣いてた。嫌な夢でも見た?」
「ちょっと…ね。起きちゃったから、シャワー浴びてくる」
そう言ってあたしは足早と零から離れた。
今あたしには零がいる。
大丈夫。
そう自分に言い聞かせながら熱いシャワーを浴びた。
.
最初のコメントを投稿しよう!