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帰りは章介と一緒になった。
二人で会社を出たときだった。
あの高い声が聞こえた。
「今帰りなんですかぁ~?お疲れ様ですぅ」
辻井真奈。
そして彼女が話している相手…。
「さっそく捕まってるな、零のやつ」
「そうみたいだね」
あたし達は立ち止まってそのやり取りを聞いていた。
「佐島さん、もう帰られますかぁ?」
「あぁ、すぐ帰るけど」
「じゃぁ一緒にゴハンでもどうですぅ?おいしいイタリアンのお店知ってるんですけどぉ…」
零が困っているのを見て、あたしも章介も少し笑っていた。
「いや、彼女いるからそういうのは…」
零はそう言うと、あたし達の姿を見つけ、辻井真奈に「じゃぁ」と言ってこちらに駆け寄って来た。
「何笑ってんだよ」
「だってお前、困ってんだもん。珍しいもの見たなぁと思って」
耐え切れなくなった章介が声を出して笑った。
「うるせーよ。栞、5分で戻るから章介とここで待ってて」
「わかった」
零が小走りで会社に戻った。章介はまだ笑いが収まらないのか、口元が緩んでいる。
その時あたしは視線を感じふと前を見た。
そこには明らかにあたしを睨んでいる辻井真奈がいた。
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