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そしてあたしは早退の届けをしてオフィスを出た。
零が会社の入口までついて来てくれた。
「なんて顔してるの。大丈夫だよ、あたしは」
「うん…」
「ほら、仕事戻りなよ。仕事に私情は持ち込まないの。零だってそうでしょ?」
「わかった。今日、早く帰るから」
零はそう言って会社の中に戻っていった。
それを確認して、あたしは歩き出す。
なんだか零の脆い部分を見た気がした。
司の彼女は気さくでかわいい人だった。
カットもうまい。
長年ロングだったあたしの髪は肩の少し上くらいの長さになった。
別れ際、今度一緒に飲みに行くことを約束して店を出た。
帰ってからソファに横になっていると、今日の疲れが急にきたのかあたしは猛烈な睡魔に襲われた。
「栞、ただいま」
「んー…零、おかえり」
「髪かなり短くなったね。栞はロングでもショートでもかわいいな」
髪を優しく撫でられた。
さっきの脆かった零はもういなかった。
あの顔はなんだったんだろう。ただ心配しただけだったのかな?
そんなことを考えながら、あたしはまた眠りについた。
零はずっとあたしの髪を撫で続けてくれていた。
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