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鏡に映った自分を見ると、ひどく青白い顔をしていた。
震えが止まらない。
「大丈夫?栞ちゃん」
「葉月先生…」
トイレに入ってきたのは、さっき来たばかりの葉月さんだった。
たぶんあたしを追って来たのだろう。
「あたしの顔見て思い出しちゃったんでしょう。ごめんね、零くんの彼女が栞ちゃんだなんて知らなかったの」
申し訳なさそうに葉月さんが言った。
「先生のせいじゃないよ。もう少しで二年経つからなんか神経質になっちゃって…」
「あれから来てないけど、体のほうはなんともないの?」
「うん。変わらないよ」
葉月さんはあたしの最大の秘密を知る人間だった。
当時荒れたあたしを支えてくれた、あたしにとってかけがえのない人。
そんな人が章介の彼女だったなんて。
「先生、あたしまだ零に言ってないの。同棲までしてるくせに…」
あたしがそう言うと、葉月さんは優しく抱きしめてくれた。
「大丈夫よ。まだ付き合って少ししか経ってないんだもの。栞ちゃんが言いたいときに打ち明けるといいよ」
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