85人が本棚に入れています
本棚に追加
「彼のこと…どう思われましたか?二人共」
“リビエラ”内の通路を歩きながらリリンが問う。
「あれが本当に“シャドウ”と遭遇した者とは…とても思えません」
バスケスが答える。
「そういえば彼は貴方と境遇が似ていますね、バスケス卿」
「はい、私が“シャドウ”と遭遇したのはMBV-707のテスト中の事でした。自分自身の経験から見ても、何かしらの影響があってもおかしくはないのですが」
『そのとうりです。でも…』
フードの人物が口を開く。
『あのかたのせいしんは正常でした。せいしんおせんをされた形跡もありませんでした』
やわらかな、優しい声。どうやら女性のようだ。
『くわしい事はわかりませんが、あのかたがたぐいまれな素質をもっているのはたしかです』
それを聞いてリリンが微笑みながら答える。
「“姉さん”が言うのなら間違い無いですね」
しかし、すぐにその表情は硬くなる。
「しかし、それだけでは“シャドウ”に打ち勝つ事はかないません。“強き心”がともなわなければ」
リリンの言葉に二人が頷く。
「ラキト・ファルテスタにその強さが無ければ…」
リリン・プラジナーはその瞳を閉じ、そして静かに言い放った。
「“影”にその心喰われ、命を散らす事になるでしょう」
最初のコメントを投稿しよう!