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エニスと別れ、ラキトはシャルの私室へと向った。
私室といっても、最早どこかの研究室といった風情だ。
「ラキト君、『テムジン』に何か気に入らない所でもある?」
ラキトが部屋に入るなりシャルは唐突にそんな事を聞いた。
「は?」
「何間抜けな声出してんの。何かあるなら遠慮無く言って。パイロットに最適な機体を提供するのがアタシ達の仕事なんだから」
「ち、ちょっと待った。何がどうしたんだ?」
あの至高のVRに文句をつけられるパイロットがいるとしたら、それこそ人を超越した達人か、ただの凡人のどちらかだ。
「…君のこの一ヵ月の戦闘データ、見せてもらってね」
「俺のデータを?」
シャルは机のパソコンを起動させるとラキトのデータを表示させた。
「知っての通り、ウチの機体は普通に動かすだけでも困難な機体よ。その点ラキト君はエニスとタメはれるぐらいだから技量は問題無いわ」
「…勝てた例しがありませんがね…」
実際エニスとの模擬戦でラキトは連敗中である。
「何故だか解る?」
「それはまあ、俺がまだエニスより弱いから」
「違うわ」
きっぱり、と言う。
「ラキト君、君は『テムジン』を乗りこなしているけど乗りこなしていない。…言うなれば機体を信頼していない」
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