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「そんな事は…」
「私の目は節穴じゃないよ?君が全力を出せてない事ぐらい解る」
ウインクする様に片目をつぶり、人差し指を〔ちっちっ〕と左右に振るシャル。
「V-コンバータの稼働効率だって80%前後で頭打ちだしね。それで何かあるなら…って思って来てもらったんだけど」
それきりシャルは黙り、ラキトの返答を促す。
少し間を置き、ラキトは答えた。
「…いえ、機体には何の不満もありません」
「…そう。それならいいわ、ゴメンねわざわざ」
「いえ…それじゃ」
ラキトは一礼して退室していった。
「うーん」
ラキトが出ていった後、シャルは一人うなっていた。
「機体には…か。となると…」
精神的な問題?
ラキトは“シャドウ”と遭遇しているし、何らかの悪影響があってもおかしく無い。
だがその後の検査では異常は無かったというし…
「データが足りないわね」
そう言うとシャルは内線に手を伸ばす。
「あ、エニス?ちょっと頼みたい事があるんだけど」
“リビエラ”の展望室。
そこにラキトは居た。
時間はすでに深夜。窓の外には一面の雲海が広がり、満月の月灯りが何とも幻想的である。
「……」
しかしそんな美しい景色を観ても、今の彼には気分転換にもならなかった。
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