四章 “影”再び

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「そんな事は…」 「私の目は節穴じゃないよ?君が全力を出せてない事ぐらい解る」 ウインクする様に片目をつぶり、人差し指を〔ちっちっ〕と左右に振るシャル。 「V-コンバータの稼働効率だって80%前後で頭打ちだしね。それで何かあるなら…って思って来てもらったんだけど」 それきりシャルは黙り、ラキトの返答を促す。 少し間を置き、ラキトは答えた。 「…いえ、機体には何の不満もありません」 「…そう。それならいいわ、ゴメンねわざわざ」 「いえ…それじゃ」 ラキトは一礼して退室していった。 「うーん」 ラキトが出ていった後、シャルは一人うなっていた。 「機体には…か。となると…」 精神的な問題? ラキトは“シャドウ”と遭遇しているし、何らかの悪影響があってもおかしく無い。 だがその後の検査では異常は無かったというし… 「データが足りないわね」 そう言うとシャルは内線に手を伸ばす。 「あ、エニス?ちょっと頼みたい事があるんだけど」 “リビエラ”の展望室。 そこにラキトは居た。 時間はすでに深夜。窓の外には一面の雲海が広がり、満月の月灯りが何とも幻想的である。 「……」 しかしそんな美しい景色を観ても、今の彼には気分転換にもならなかった。
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