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「暗いぞ、ラキト」
いつのまにかやって来たエニスが背後から声をかけた。
「ほっといてくれ」
「それがそうもゆかなくてな」
すとん、とラキトの横に座るエニス。
「何を…抱えている?」
「藪から棒に…」
「シャルから話は聞いた。私でよければ…ラキト?」
唐突にラキトは立ち上がり窓の方へと歩いて行く。
「……」
果てしなく広がる雲海を見つめる。
「“シャドウ”が恐い訳じゃない。戦う覚悟もある。最高のVRまで用意してもらった」
拳を握りしめる。
「けど“シャドウ”との戦いが終わったら俺に何が残る?負ければそこまで、勝てたとしても俺の存在は既に抹消されている」
エニスは黙ってラキトの告白を聞いていた。
自嘲気味にラキトは続ける。
「覚悟を決めたとか言いながら、そんな事を心のどこかで考えてたんだな。何も得るモノなんか…」
「ははははははははは!」
エニスが突然笑い出す。
「な…い…ておい」
「くくく…はははははは!!」
腹抱えて笑い転げる。
とまではいかないものの、普段の彼女からは想像できない程の笑い声であった。
「何を思い悩んでいるのかと思えば…くくっ…はははははっ!」
「な、何だよ?!何が可笑しい?!」
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