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「…シャルが何を作ったのか知らないが…」
よろめく機体を何とか立たせながら、エニスが言う。
「…行け、ラキト」
「馬鹿か!?何言ってるんだ!そんな状態で」
機体は多大なダメージを受け、パイロットのエニス自身も、リミッターインプラントによって全力を出せる状態ではない。
「お前こそ下がれ!」
だがエニスは、
「…ラキト、シャルは“良いモノ”を作ったと言っていた」
…聞いちゃいなかった。
「~、コイツはまた…」
エニスは時々、人の話を聞かなくなる。
彼女の数少ない欠点の一つだ。
「シャルが“良いモノ”だとそう言っているなら、それは掛け値無しで良いモノだ。しかも戦闘中に知らせてくるくらいなら…なおさらな」
『そーいう事!ほら、さっさとする!あちらだって、いつまでも待ってくれないよ?』
待ってる訳ではないだろう―とラキトは思うが、実際“シャドウ”は、こちらを伺う様子のまま動く気配は無かった。
「…案ずるな」
少し笑いを含んだ声でエニスが言う。
「私の事が心配なら、さっさと行ってさっさと戻ってくればいい。それだけだろう?」
「………は」
なんとも。
「…かなわないな」
自然に笑みがこぼれる。
本当に、コイツには。
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