四章 “影”再び

19/24

85人が本棚に入れています
本棚に追加
/118ページ
「…シャルが何を作ったのか知らないが…」 よろめく機体を何とか立たせながら、エニスが言う。 「…行け、ラキト」 「馬鹿か!?何言ってるんだ!そんな状態で」 機体は多大なダメージを受け、パイロットのエニス自身も、リミッターインプラントによって全力を出せる状態ではない。 「お前こそ下がれ!」 だがエニスは、 「…ラキト、シャルは“良いモノ”を作ったと言っていた」 …聞いちゃいなかった。 「~、コイツはまた…」 エニスは時々、人の話を聞かなくなる。 彼女の数少ない欠点の一つだ。 「シャルが“良いモノ”だとそう言っているなら、それは掛け値無しで良いモノだ。しかも戦闘中に知らせてくるくらいなら…なおさらな」 『そーいう事!ほら、さっさとする!あちらだって、いつまでも待ってくれないよ?』 待ってる訳ではないだろう―とラキトは思うが、実際“シャドウ”は、こちらを伺う様子のまま動く気配は無かった。 「…案ずるな」 少し笑いを含んだ声でエニスが言う。 「私の事が心配なら、さっさと行ってさっさと戻ってくればいい。それだけだろう?」 「………は」 なんとも。 「…かなわないな」 自然に笑みがこぼれる。 本当に、コイツには。
/118ページ

最初のコメントを投稿しよう!

85人が本棚に入れています
本棚に追加