五章 激突、そして

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少し時間を巻き戻す― 「くっ…歯痒い…」 “シャドウ”が繰り出してくる攻撃を捌きながら、エニスが呟く。 ラキトがシャルの作った『いいモノ』を受け取りに戻った後、一人“シャドウ”を阻むべく残ったエニスであったが、思う様に動かぬ愛機に苛立ちを募らせていた。 原因は解っている。 他でもない、自分自身である。 先程受けた“シャドウ”の火炎放射攻撃。その時エニス自身もダメージを負った為、これ以上パイロットに負担をかけぬ様に『テムジン』の自立調整機能が働き、V-コンバータ出力に制限をかけているのだ。 白光騎士団仕様機の凄まじい迄の高性能さ故である。 もともとのベース機『MBV-707-Gテムジン』背部に搭載されたマインド・ブースターによるこの機能は、本機の高い操作性の実現に寄与し、どの様なパイロットが搭乗してもある程度のポテンシャルを発揮する事が出来た。 だが今のエニスにとっては足枷以外の何物でもなかった。 気持ちとは裏腹に思う様に動かぬ機体。 【……】 「…くっ…!」 そんな状態のエニスを“シャドウ”が一撃、また一撃と追い詰めていく。
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