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「…ああ、まかせておけ」
「!?」
思いもよらぬ程近くから聞こえた声に、エニスは閉じかけた目蓋を開く。
「ラ、ラキト?」
視界に飛び込んできたのは自分を見つめるラキトの顔。
一瞬間を置き、彼に抱き抱えられている事に気付く。
「え…これは一体…私は…?」
少し思考が混乱する。
自分は“シャドウ”もろとも“リビエラ”を飛び出した筈では―
「まったく無茶したもんだな、そんな体で」
あきれながらもどこか安心した様な顔をして、ラキトは微笑む。
エニス自身は飛び出した直後だと思っているが、実際にはそれなりの時間が経過していた。
「すぐに博士も来る…身体、大丈夫か?」
「……ああ、大事ない…」
そう言って再びエニスは目を閉じ、頭をラキトの胸にもたせかける。
(…不思議だ)
身体のあちこちが悲鳴をあげているのに。
なんだかとても心地好かった。
「ラキト…わた」
『エ~ニ~ス~!』
響き渡る大音量。
「お、来たな」
見上げると、シャルがレシーバーを片手にVRトランスポーターのハッチから身を乗り出していた。
『大~丈~夫~?』
そう言ってぶんぶんと手を振るシャル。
「……不粋な奴め」
「ん、どうしたんだ?」
エニスは一瞬ラキトを見つめ、そして一言。
「…何でもないっ」
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