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一瞬ではあるが胸中をよぎった、自らの本当の想いを言える訳もなく。
「エニス?」
「………」
エニスはただうつむくばかりだった。
―少しばかり顔を赤らめながら。
「あらあら派手にやってくれたわね」
着陸したトランスポーターから降り立ったシャルは、ボロボロの『テムジン』を見て半ば感心したように言った。
「すまないシャル、私の力不足だ…」
“リビエラ”の救護隊のベッドに身を横たえたエニスが詫びる。
「何言ってんの、アナタが無事でよかったわ」
てっきりシャルのカミナリが落ちると思っていたラキトは、その優しい声色に少し驚いた。
「VRならアタシが何度だって直したげる」
そう言いながらエニスの髪を指ですく。
「でも生身の人間はそうはいかないからね…」
「シャル…」
「…無事で良かったわ、ホント」
そんな二人を見てラキトは微笑むがすぐに表情を引き締める。
「……」
エニスの事はもう大丈夫だ。
後は“シャドウ”を倒すのみ。
ラキトは決意も新たに、愛機に向かって歩きだした。
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