五章 激突、そして

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「ふぅ…寿命が縮む…ぜ…ったく…」 コクピットの中で息をつくラキト。 涼しい顔をしていたが、タイミングを誤れば今頃スクラップである。 さすがに緊張の極みにあったらしい。 だが、当初の目論みは上手くいったようだ。 【………!?】 「…これでお得意の突撃は使えないな」 “シャドウ”の左肘の関節部にビームダガーが深々と突き刺さっている。 先刻の交錯の時に投げ付けられた物だ。 『ドルドレイ』の突撃戦法は前方からの攻撃には確かに無敵であるが死角は存在する。 それは頭上、上空からの攻撃。 ラキトは真っ向から斬り合うと見せかけてギリギリまで引き付け、上空へ避けると同時にダガーを投げ付けたのだ。 斬り合うと見せかけたのは“シャドウ”にへたな動きをさせず、左肘の関節部をピンポイントで狙う為である。 【………】 “シャドウ”は左腕を動かそうとするがまるで反応が無い。 『サイファー』のビームダガーは突き刺さると、ただのダメージだけでなくVRの駆動系とOSであるM.S.B.Sとのリンクをしばらくの間カットさせる効果がある。 結果、VRの機動性を著しく低下させたり、ラキトのように特定の部位を使用不能にさせたりする事が出来る。 短時間でダガーは消えてしまうとはいえ、その戦術的価値は高い。
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