五章 激突、そして

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【……ク…クク…】 静寂を破ったのは、いつか聞いたあの声。 【…ヤハリ…デハ、カナ…ワ…ナイカ……】 「この声……!」 “シャドウ”と初めて相対した時、聞いた声だ。 【…ダガ…モウスコシ……コイツニ…オツキアイ…イタダコウ……】 しかし、あの時と違いラキトが感じたのは恐怖ではなく。 (コイツ、だと?) 違和感であった。 「どういう事だ…オマエは…」 【……サテ…ナ…】 その時、突如『ドルドレイ』のV-コンバータが唸りをあげて稼動を始めた。 「う…何が!?」 コンバータから発している光がその強さを増し、ラキトの視界を閉ざしていく。 「一体何が起きてるんだ…!」 一方、エニス達もその光を目撃していた。 「何だ…あれは?」 「何だか知らないけど…すっごい嫌な感じね…」 光を発している場所は、今正に向かおうとしている場所。 即ち、ラキトが“シャドウ”と戦っているであろう場所である。 そこから発する異常な光。 「ま、行くしかないわね。ここからじゃ何も分からないわ」 そのシャルの言葉に頷きつつも、形のない漠然とした不安が自らの心に広がるのをエニスは感じていた。 「ラキト…」 そして知らず知らずの内に祈っていた。 ラキトの無事を。
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