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「……そうだったな」
そうだ。
言った当人が立ち止まっていてどうする。
ここでただ無事を祈るだけで良いのか。
「どうしたの?エニス」
何処かへ行こうとしたエニスをシャルが呼び止める。
エニスは立ち止まり微笑みながら振り返った。
「やはり私には性に合わない。ただ見守っているというのは」
そして再び前を向く。
「剣を持ち共に戦う。それが私のやり方だ。白光の騎士として、なによりエニス・レアリスとして」
「…やれやれ、仕方ないわねぇ」
呆れ返った口調であったが、どことなくシャルの表情は楽しそうだ。
「貴方の剣は折れているわよ。腕の良い鍛冶師が必要じゃない?」
「……ふふっ、それではお願いできるか?鍛冶師殿」
「ご指名とあらば。騎士様」
笑みを浮かべて恭しくお辞儀するシャルだった。
ろくに照準もつけないままに、モータースラッシャーの射撃兵装が火を噴いた。的が大きいので難なく全弾が命中していく。
だが『ドルドレイ』はもともと重装甲が売りの機体である。巨大化した事でそれがさらに強化されたのか、レーザーもビームもまるでダメージを与えられずいた。
「なら…!」
急上昇をかけ“シャドウ”の頭上でVR形態に変形、そのまま自由落下にまかせビームソードで斬り掛かる。
しかしそれでも微かな傷跡がついただけ。決定的なダメージは与えられない。
「チッ!」
思わず舌打ちする。
こちらの攻撃は効かないだろうと予感はしていた。
が、あまり嬉しくない予感的中であった。
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