さよならの真ん中

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病の宣告を受けたときはすんなりとそれを受け入れることができた。 今度は母さんみたいに俺がみんなを残してゆく方になっちゃったな、なんて。 ただ自分の事なんかよりおれは真っ先に残される水谷のことが心配でしょうがなかった。 『栄口今日は外の桜に花が咲き始めてたんだよ』 うん 『これ西浦のみんなで折り鶴作ってんだ!!栄口が早く治るようにってね』 うん 『大丈夫、栄口の病気はすぐ治るよ』 うん ありがとう。 水谷は必死に明るくふりまって俺が治るように元気づけてくれた。まるで俺が母さんにしたかのように。 寂しい瞳で。 でも自分の身体のことだから自分が一番わかるよ。俺はもう長くない。 今まで生きてきたなかで悲しいこともたくさんあった。 どうしようもない気持ちになって何度おわりにしたいかとも思った。 でも彼からいろんなものを貰った。愛し愛することを知った。 水谷に出会えてこうして生きて来られた。 心は満たされて 本当に、幸せだった。 だから俺は思った儘を口にした。 彼には幸せになって欲しいと。 母さんが病にかかっても絶やさなかった優しい笑みの意味。 意識が亡くなる最期まで愛する人に思われるなんて、もう思い残すことなんか何もないよ。 ほらさっさと泣き止めって!!お前に泣き顔はにあわないんだよ。 いつもみたいにふにゃっと笑ってろよ。 (お前の終着点で俺は待ってるから、ゆっくり来いよな。)
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