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「あぁ……気持ちがいいね、小山さん」
「本当に。社長とこうしてひなたぼっこをするのは、久しぶりですなぁ?」
社長と研究所セクション責任者小山泰三は、庭のベンチで和んでいる。
「おぉ、そうだ!西山君のコーヒーがあるんだよ。小山さんも好きだろう?」
側で太陽をいっぱい浴び、願わくば充電……そんな事を企んでいた秘書ロボットは、慌ててレジャーシートを敷く。
手際よくカップを用意し、香ばしいかおりのコーヒーを注ぐ。
「この香り……そしてコク」
小山は満足そうにコーヒーを啜った。
雲がゆっくりと流れてゆく昼下がり、めずらしく小山の誘いでひなたぼっことなった。
「社長、私はまだまだこの麒麟COMPANYでやりたい事がある。しかしです……時間が余りにも少ない」
小山のまるで独り言のような言葉に、社長はうろたえる。
「ムムッ?弱きな発言だよ小山さん!」
秘書ロボットも、お代わりのコーヒーをダラダラと流してしまう粗相をする始末だ。
麒麟COMPANYに定年退職はない。
小山は今年76才になった。
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