始まりの音

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「…はい…。」 チッ!と舌打ちを僕にしてから、西野はしょうがないと職員室を出て行った。 他の授業のある先生達も、職員室から出て個々の教室へ。 職員室に残されたのは僕と用務員、そして田中校長の三人。 用務員は少し気まずそうだ。 それもその筈。 一人は50代メタボ体型の脂ぎった親父。 そして、もう一人は何故かズタボロな状態で登校し、担任に責められていた高校一年。 僕が用務員の立場でも、気まずいって思っただろう。 「柴田さん、ちょっと私は彼と校長室で話して来るから、ここは任せましたよ。」 校長が用務員に合いの手。 この言葉で用務員は、気まずいって顔から助かったって顔に変わった。 「解りました。それでは、何かありましたら校長室の方に電話繋ぎます。」 「そうしてくれ。」 「さぁ、ここに入るんだ。」 校長室のドアを開けて、校長が僕に言う。 そんな僕は、校長に言われるまま校長室に入った。 「そこに座りなさい。」 校長が黒いソファーを指差し言う。 「…。」 僕は小さく頷いて座った。 校長室には歴代の校長の顔写真がズラーっと飾られている。 皆、うさん臭い顔だ。 とは言っても今の僕は、チンピラに殴られて腫れた目だから、ハッキリとは見えていないんだけど。
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